スキマ時間で「集める、並べる、見返す」:忙しい大人のための収集・分類遊び
日々の仕事に追われ、ふと気づくと「自分自身の時間」や「心が弾むような時間」から遠ざかっていると感じる大人は少なくありません。かつては熱中した趣味も、今は道具に埃がかぶっているかもしれません。そんな忙しい日々の中で、「遊び心」を取り戻し、日常に新しい視点や活力を加えることは可能なのでしょうか。
忙しい大人にこそ「遊び」や「創造的な活動」が必要な理由
なぜ今、大人に「遊び」が必要なのでしょうか。ここでいう「遊び」とは、単なる気晴らしや娯楽にとどまりません。自発的に楽しみ、没頭し、探求する活動を指します。このような遊びや創造的な活動は、忙しい大人にこそ多くの恩恵をもたらします。
まず、日常のルーティンから一時的に離れることで、脳がリフレッシュされます。新しい情報に触れたり、普段使わない思考回路を使ったりすることで、凝り固まった考えがほぐれ、問題解決への新たな視点が得られることがあります。これは、仕事における創造性や発想力の向上にも繋がります。
次に、短時間でも何かを達成する感覚は、自己肯定感を高めます。多忙な日々では、大きなプロジェクトの完了まで時間がかかり、達成感を感じにくいことがあります。しかし、遊びの中で小さな目標を設定し、それをクリアしていくことは、確実な満足感と充実感をもたらします。
さらに、集中して何かに取り組む時間は、ストレス軽減に効果的です。目の前の活動に没頭することで、仕事の悩みや雑念から一時的に解放され、心の平穏を取り戻すことができます。手先を動かす作業や、じっくりと観察する時間は、特に心を落ち着かせる効果が期待できます。
短時間で始められる「収集と分類」の遊び
「遊びたい気持ちはあるけれど、まとまった時間がない」「新しいことを始めるのは億劫だ」と感じている方におすすめしたいのが、「収集と分類」をテーマにした遊びです。これは、特別な場所や高価な道具が不要で、文字通りスキマ時間を使って始められ、かつ深い没入感と発見をもたらす可能性を秘めています。
収集と分類の遊びは、かつて子供の頃に石ころや虫、シールなどを集めた経験に繋がるかもしれません。大人になった今、これを少しだけ視点を変えて取り組むことで、日常の見慣れたものが全く新しい魅力を持って見えてきます。
短時間で完結できる、または中断・再開しやすい具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
1. 身近な「石」を集めて分類する遊び
- 必要なもの: 小さな箱や袋、虫眼鏡(あれば)、ノート(あれば)
- 簡単な手順:
- 散歩中や通勤途中に、気になる形の石を一つだけ拾います。最初は「これだ」と思った直感で構いません。
- 家に持ち帰り、形、色、質感などをじっくり観察します。虫眼鏡を使うと、表面の模様やキラキラした部分など、新しい発見があるかもしれません。
- 拾った石を小さな箱に入れます。複数集まってきたら、「つるつるしているもの」「ざらざらしているもの」「平たいもの」「丸いもの」など、自分なりの基準で分類してみましょう。
- ノートに、拾った場所や日付、感じたことなどを簡単にメモしても良いでしょう。
- 期待できる効果: 自然への意識が高まる、観察力が養われる、分類する行為自体が思考の整理になる、集まった石を並べて眺める癒し。
2. 食品や日用品の「ラベル・パッケージ」を集めて並べる遊び
- 必要なもの: はさみ、ノートやスクラップブック、のり
- 簡単な手順:
- 使い終わった食品のパッケージや、気に入ったデザインのラベルなどを捨てる前に切り取ります。
- 切り取ったものをノートやスクラップブックに貼っていきます。
- 複数集まってきたら、「色の組み合わせ」「フォントの形」「イラストの雰囲気」など、デザインに着目して分類し、ページを分けて貼ってみましょう。
- なぜそのデザインが好きなのか、どんな工夫がされているのかなどを簡単に書き添えると、より深く楽しめます。
- 期待できる効果: 日常の中のデザインに気づく、視覚的な感性が磨かれる、コレクションが増える達成感、小さなものを再利用する満足感。
3. スマートフォンで「特定の被写体」の写真を撮って整理する遊び
- 必要なもの: スマートフォン
- 簡単な手順:
- テーマを決めます。「空の様子」「猫」「古い建物の窓」「マンホールの蓋」など、身近で興味のあるものが良いでしょう。
- 外出先や通勤中、自宅などで、決めたテーマに沿ったものを見つけたら、意識して写真を撮ります。
- 寝る前の数分や移動時間などに、撮りためた写真を見返します。
- 写真アプリの機能を使って、「テーマ別」「撮影場所別」「色合い別」などでアルバムを作成し、分類してみましょう。
- 期待できる効果: 日常の見慣れた風景に新しい視点を持つ、観察力が向上する、デジタルな整理スキルが身につく、集まった写真を見返す楽しみ。
これらの遊びは、どれも始めるのに特別な準備はほとんど要りません。外出のついでや、家にあるものを活用して、すぐにでも始められます。1回あたり15分〜30分といった短時間でも、「集める」「分類する」「並べる」「見返す」といった一連のプロセスの中で、確かな達成感や満足感を得ることができます。
始める際のハードルを下げるコツ
新しいことを始めるのが億劫だと感じるのは自然なことです。特に忙しいときは、完璧にやろうと考えすぎると、かえって行動できなくなってしまいます。収集と分類の遊びを気軽に始めるためのコツをいくつかご紹介します。
- 「完璧を目指さない」: 最初からたくさんのものを集めたり、厳密なルールで分類したりする必要はありません。まずは「何か一つ拾ってみる」「ラベルを一つだけ切り取ってみる」「テーマを決めて写真を一枚撮ってみる」というように、最も小さな一歩から踏み出してみてください。
- 時間を決める: 「今日の帰りに石を一つ探す」「寝る前に写真を見返す時間を5分だけ作る」など、具体的に時間を区切ると始めやすくなります。
- ルールは自分なりでOK: 分類する際の基準は、学術的なものでなくても構いません。「なんとなく好きだから」「形が面白いから」といった、自分の直感を大切にしてください。
- 準備は最小限に: 特別な収集ケースや分類ツールを買い揃える必要はありません。空き箱やノートなど、今あるもので十分に楽しめます。
遊びを継続するためのヒント
短時間で始められる遊びでも、継続するためには少しの工夫が必要です。
- 「見返す」時間を大切にする: 集めたものを並べて眺めたり、デジタルアルバムをめくったりする時間を作ることで、達成感を得られ、次の活動へのモチベーションに繋がります。
- テーマを広げたり、変えたりする: 一つのテーマに飽きてきたら、別のものを集めてみたり、同じものでも違う分類方法を試したりすることで、新鮮さを保てます。
- 他の遊びと組み合わせる: 例えば、集めた石をスケッチしたり、ラベルのデザインから物語を想像したりと、他の創造的な活動と組み合わせることで、遊びがより豊かなものになります。
- 記録をつける: ノートに簡単なメモを残したり、写真を撮って記録したりすると、後で見返したときに発見があり、継続の励みになります。
まとめ
多忙な日々を送る大人にとって、「遊び」や「創造的な活動」は、単なる息抜きではなく、日々の活力や新しい視点を取り戻すための重要な要素です。特に「収集と分類」の遊びは、特別な準備なく短時間から始められ、身近な世界を再発見する喜びや、思考を整理する機会を与えてくれます。
「集める」「分類する」「並べる」「見返す」というシンプルな行為を通じて、私たちは日常の見慣れたものの中に隠された美しさや面白さに気づき、観察力や感性を磨くことができます。完璧を目指す必要はありません。まずは、あなたのデスクの上や通勤経路、スマートフォンのアルバムの中から、何か一つ「気になるもの」を見つけることから始めてみませんか。
短時間でも良いのです。あなたの「遊び心」という名の小さなスイッチをONにすることで、きっと日常が少しずつ、より豊かなものに変わっていくことでしょう。