身近なモノで始める小さな物語づくり:忙しい大人のための想像力刺激遊び
忙しい毎日の中で、遊びゴコロを取り戻す
日々の仕事に追われ、時間に余裕がないと感じている方も多いのではないでしょうか。責任ある立場になればなるほど、自分のための時間は後回しになりがちです。若い頃は没頭できた趣味も、今は遠い記憶となっているかもしれません。しかし、そんな忙しい日々だからこそ、「遊び」や「創造的な活動」が重要な意味を持ちます。
遊びと聞くと、準備に時間がかかったり、ある程度のスキルが必要だったりするものというイメージがあるかもしれません。しかし、ここでお伝えしたいのは、ほんのわずかな時間、特別な道具も場所も必要としない、日常の隙間にそっと差し込めるような「遊び」です。今回は、身近なモノを使って想像力を刺激し、小さな物語を生み出すことで、日常に新たな視点とリフレッシュをもたらす遊びをご紹介します。
なぜ今、忙しい大人に「遊び」が必要なのか
なぜ、多忙な日々に遊びを取り入れることが大切なのでしょうか。それは、遊びが私たちの脳と心に多様な良い影響をもたらすからです。
- リフレッシュとストレス軽減: 仕事とは直接関係のない活動に没頭することで、脳を休ませ、心身の緊張を和らげることができます。短い時間でも集中することで、気分転換になり、ストレス軽減につながります。
- 創造性や発想力の向上: 遊びは多くの場合、自由な発想や試行錯誤を伴います。これにより、固定観念にとらわれない柔軟な思考が促され、仕事における問題解決能力や新しいアイデアを生み出す力が高まる可能性があります。
- 新しい視点の獲得: いつも見慣れた日常やモノに対して、遊びの視点を持つことで、新たな発見や気づきが生まれます。これは、マンネリ化した日常に刺激を与え、日々の満足度を高めることにつながります。
- 達成感と自己肯定感: 遊びを通じて小さな成果を上げたり、目標を達成したりすることで、自己肯定感が高まります。これは、仕事で感じるプレッシャーや疲れを軽減する助けにもなります。
まとまった時間や大がかりな準備が必要な趣味だけでなく、短時間で気軽に取り組める遊びにも、これらの豊かな効果が期待できます。
短時間で始められる「身近なモノで小さな物語づくり」
今回具体的にご紹介する遊びは、「身近なモノで小さな物語づくり」です。これは、文字通り、デスクの上や引き出しの中、あるいはリビングの棚など、ごく身近な場所にある日用品や小物をいくつか選び、それらを組み合わせて配置することで、そこにどんな物語や世界観があるのかを自由に想像するという遊びです。
どんな遊びか
この遊びに決まったルールはありません。例えば、ペンとクリップと消しゴムをデスクに並べたとき、ペンが主人公で、クリップは相棒、消しゴムは倒すべき敵に見立てて、短い冒険物語を想像する。あるいは、使いかけの付箋とコーヒーカップのシミを見て、そこに広がる抽象的な世界の風景や、そこで交わされる無声の対話を感じ取る。このように、見慣れたモノたちが、あなたの想像力の中で生き生きと動き出し、独自のストーリーを紡ぎ始めるのです。
始めるために必要なもの
- 身近にあるモノ数点: ペン、クリップ、コイン、飲み物のフタ、小さなフィギュア、石、葉っぱ、鍵、USBメモリ、マスキングテープ、輪ゴム、クリップなど、あなたの身の回りにある、形や質感が異なる様々なモノが使えます。特別なものを買い足す必要は一切ありません。
- わずかな時間: 5分、10分、長くても15分程度あれば十分に楽しめます。
- ほんの少しの好奇心と想像力: これが最も重要な「道具」です。
簡単な手順
- 場所を決める: デスクの上、サイドテーブル、窓辺、本棚の隙間など、落ち着いてモノを並べられる小さなスペースを選びます。
- モノを選ぶ: その場所や、あなたの気分に合わせて、2つ、3つ、あるいは5つほど、気になるモノを選びます。意図せず目に入ったモノを手に取るのも良いでしょう。
- 配置してみる: 選んだモノを、場所の上に並べてみます。触ったり、角度を変えたり、距離を離したり近づけたりしながら、色々な配置を試してみてください。
- 想像を巡らせる: 配置されたモノたちをじっと眺め、自由に想像を巡らせます。「このペンは何かを追っている探偵かな」「このクリップは探偵の古い友人みたいだ」「この消しゴムは、二人が探し求める秘密の鍵が隠された場所かもしれない」など、モノに役割を与えたり、関係性を見出したり、背景にある状況や世界観を考えたりします。登場人物たちの短いセリフや、その場で起きている出来事を想像するのも楽しいでしょう。
- 記録する(任意): 思いついた物語やセリフをメモしたり、配置したモノの写真を撮ったりして、記録に残すこともできます。
期待できる効果や達成感
この遊びは、特別な技術や知識を必要とせず、すぐに始めることができます。短い時間でも集中することで、日常の雑念から一時的に離れ、リフレッシュ効果が期待できます。また、見慣れたモノが全く違うものに見えてきたり、そこに自分だけの世界が生まれたりするプロセスは、新鮮な驚きと楽しさをもたらします。小さなモノたちから大きな物語や世界観を想像できたときには、創造的な達成感を得られるでしょう。
始める際のハードルを下げるコツ
新しいことを始める際には、「うまくいかなかったらどうしよう」「何をすればいいのか分からない」といった億劫さを感じることがあるかもしれません。この遊びを始めるためのハードルを下げるには、以下の点を意識してみてください。
- 完璧を目指さない: 「素晴らしい物語を作らなければ」と気負う必要はありません。単にモノを並べて、「これ、〇〇みたいに見えるな」と感じるだけでも十分な遊びです。
- 時間を厳密に決めない: 「○時になったら10分だけやる」と決めすぎると、それが負担になることもあります。「休憩時間になったら」「コーヒーを淹れる合間に」など、自然な隙間時間を利用するくらいで捉えるのが良いでしょう。
- 目についたモノから始める: 「何を使おうか」と悩みすぎず、デスクの上にあるもの、引き出しを開けて最初に目についたものなど、偶然に任せてモノを選ぶと、予期せぬ組み合わせが生まれて面白さが増します。
- 「遊び」であることを忘れない: これは義務でも仕事でもありません。楽しむことが最大の目的です。もし「つまらないな」と感じたら、すぐにやめても構いません。
遊びを継続するためのヒント
短時間で始められる遊びも、継続するのは難しいと感じるかもしれません。この「身近なモノで小さな物語づくり」を生活に取り入れていくためのヒントをいくつかご紹介します。
- 記録を見返す: 写真に撮っておいた配置や物語を、後で見返してみましょう。時間が経ってから見ると、また違う発見があるかもしれません。記録自体が、遊びの成果となり、継続へのモチベーションにつながります。
- 少しずつ変化を加える: いつも同じ場所、同じモノを使うのではなく、場所を変えてみたり、いつもは使わないモノを取り入れてみたり、少しずつ変化をつけてみましょう。新しい刺激がマンネリを防ぎます。
- 他の遊びと組み合わせる: 例えば、この遊びで生まれた物語の断片をメモしておき、後日ライティングの遊びに活かしたり、物語の世界観を絵にしてみたりと、他の創造的な活動と連携させることも可能です。
- 義務にしない: 「毎日やらなければ」と義務にしてしまうと、かえって負担になります。気が向いた時に、無理なく続けることが最も重要です。
まとめ
忙しい日常の中で、自分のための時間や創造的な活動はつい犠牲になりがちです。しかし、それは心身の健康や、仕事のパフォーマンスにとっても重要な要素です。「身近なモノで小さな物語づくり」のような、場所も道具も選ばず、短時間で始められる遊びは、そんな多忙な大人にこそ試していただきたい方法です。
この遊びを通じて、見慣れた日常に隠された面白さや可能性を発見し、凝り固まった思考を解きほぐし、あなたの想像力を自由に羽ばたかせてみてください。それはきっと、日々の生活に小さな彩りを添え、忘れかけていた遊びゴコロを呼び覚ますきっかけとなるはずです。まずは、今、あなたの目の前にあるモノにそっと手を伸ばしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。