身近なモノとノートで始める:忙しい大人が短時間で楽しむ空想設定遊び
忙しい日々に潜む遊びゴコロの種
毎日の仕事に追われ、自分の時間を持つことが難しいと感じていらっしゃる方も多いかもしれません。責任ある立場になればなるほど、思考は常に業務の効率化や課題解決へと向けられがちです。若い頃に熱中していた趣味は遠い記憶となり、新しいことに挑戦するエネルギーも湧きにくい。しかし、心のどこかで「何か創造的な活動でリフレッシュしたい」「日常に変化が欲しい」と感じているのではないでしょうか。
まとまった時間は取れない。特別な道具や場所もない。そんな状況でも、私たちの日常には「遊びゴコロ」を刺激する種がいたるところに隠されています。必要なのは、ほんの少しの視点の切り替えと、短時間でできる手軽な方法を知ることです。
なぜ今、忙しい大人に「空想」が必要なのか
ここで提案したいのは、「空想設定遊び」です。これは、身近なモノや状況を観察し、そこに自分だけの架空の設定や物語の断片を加えて楽しむ遊びです。なぜこのような遊びが忙しい大人にとって有効なのでしょうか。
- 脳のリフレッシュになります: 仕事で使う論理脳とは異なる、イメージや連想を司る右脳を刺激します。これにより、思考の偏りを解消し、脳をリフレッシュさせる効果が期待できます。
- 新しい視点をもたらします: 日常で見慣れた風景やモノも、空想のフィルターを通すことで全く違った姿に見えてきます。これにより、固定観念にとらわれない柔軟な思考が養われます。
- 非日常への短い旅です: 現実から少し離れ、自分の頭の中で自由に世界を創造する時間は、気分転換に最適です。短い時間でも、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
- 創造性のウォームアップになります: いきなり大きな作品を作るのはハードルが高くても、小さな設定を考えることから始めるのは容易です。これが、後々より大きな創造活動につながる可能性があります。
短時間で始められる空想設定遊びの具体例
この遊びに特別な道具は必要ありません。普段お使いのノートやメモ帳、ペン、そしてスマートフォンがあれば十分です。1回あたり15分から30分程度の短い時間で完結できます。
例1: 身近な道具に「隠された能力」を設定する
デスクの上にあるペンやマグカップ、キーボードなど、何でも構いません。その道具が、実は密かにすごい能力を持っていると想像してみてください。
- 手順:
- 一つの道具をじっくり観察します。その形、色、手触り、傷などを把握します。
- その特徴から連想される「隠された能力」を考えます。例えば、使い古されたペンは「書いた文字に真実味を宿す」、歪んだマグカップは「飲むと一時的に時間を遅く感じる」、キーボードは「特定のコマンド入力で現実世界の現象を操作できる」などです。
- 考えた設定をノートに書き出します。「○○(道具名): 見た目は平凡だが、△△という能力を持つ。能力発動の条件は□□。この能力でできることは……」のように具体的に記述してみます。
- 必要なもの: ノート、ペン、身近な道具
- 期待できる効果: 観察力の向上、既存の概念にとらわれない発想力、ユーモアの発見
例2: 通勤ルートの「架空の住人」を設定する
毎日通る道で見かける建物やお店、公園などに、そこに住んでいる(または働いている)架空の人物を想像します。
- 手順:
- 通勤中、気になる場所(古びた喫茶店、いつも閉まっているシャッターの店、大きなマンションの一室など)を一つ選びます。
- その場所の雰囲気や外見から、そこにいる架空の人物像を想像します。年齢、職業、性格、普段何をしているのか、どんな秘密があるのか。
- 想像した人物像をノートに書き留めます。「(場所)に住む人物:名前は△△。年齢は□□歳くらい。職業は……。見た目は……。普段は……しているが、実は……という裏の顔を持つ」のように詳細に設定してみます。スマートフォンのメモ機能を使っても良いでしょう。
- 必要なもの: ノートまたはスマートフォンのメモ機能、ペン
- 期待できる効果: 観察力、想像力の向上、日常風景の発見、自分だけの秘密めいた楽しみ
例3: 今日食べたものに「架空の背景」を設定する
ランチに食べたお弁当のおかずや、コンビニで買ったお菓子など、今日口にしたものに、作られた背景や由来を空想します。
- 手順:
- 食べたものを一つ選びます。
- その食べ物がどのような場所で、誰によって、どのような目的で作られたのか、架空のストーリーを想像します。例えば、「この唐揚げは、はるか異国の地で伝説の鳥を捕まえるために考案された料理法が元になっている」「このクッキーは、特別な日にしか作られない、隠し味に秘密がある家伝のレシピ」などです。
- 考えた背景設定をノートに書き出します。「(食べ物名)の背景:これは〇〇という地方の△△さんが、□□な目的のために開発した特別な一品。素材の秘密は……。この製法は一子相伝で伝えられている」のように記述してみます。
- 必要なもの: ノート、ペン、今日食べたもの(現物または記憶)
- 期待できる効果: 五感を通じた発想、ユーモアの発見、日常の中の物語性への気づき
始める際のハードルを下げるコツ
「空想」と言われると、難しく考える必要はありません。
- 完璧を目指さない: 最初から壮大な物語や緻密な設定を作る必要はありません。思いついた断片的なアイデアを書き出すだけでも十分です。
- 「面白そう」から始める: 義務感ではなく、「これをこう考えたら面白いかも」という軽い気持ちで始めてみましょう。
- 身近なモノから始める: 見慣れたものほど、意外な側面や設定が見つかりやすいものです。特別なものを探す必要はありません。
- 「書く」ハードルを下げる: きれいな文章である必要はありません。箇条書きや単語だけでも構いません。大切なのは、頭の中の空想を外に出してみることです。
遊びを継続するためのヒント
継続するためには、生活の中に無理なく組み込む工夫が必要です。
- 時間を決める: 「毎日、寝る前に15分」「通勤電車の中で1駅分」など、具体的な時間を決めると習慣化しやすくなります。
- テーマリストを作る: 「今日の身近な道具」「今日の通勤風景」「今日の食べ物」など、あらかじめテーマを決めておくと、いざ始めようとしたときに迷いません。
- 記録を見返す: 以前書き出した設定を見返すと、新たなアイデアが浮かんだり、自分の発想の傾向に気づいたりして、モチベーション維持につながります。
- 他の遊びと組み合わせる: 書き出した設定を元に短い絵を描いてみたり、言葉を整えて詩のようにしてみたりと、他の創造活動のきっかけにすることもできます。
まとめ
忙しい毎日の中で、意識的に「遊ぶ時間」を作ることは、心身のリフレッシュだけでなく、新しいアイデアや問題解決のヒントを見つけるためにも非常に有効です。「空想設定遊び」は、特別なスキルや道具が不要で、短時間から始められる手軽さが魅力です。
身近な日常の中に隠された遊びゴコロの種を見つけ、あなたのノートに自由な発想を書き出してみてください。それはきっと、あなたの思考に新鮮な風を吹き込み、日々の風景を少しだけ違う色に見せてくれるはずです。今日からでも、机の上のペンから、あるいは帰り道に見かけたものから、小さな空想の旅を始めてみてはいかがでしょうか。