スキマ時間で頭を遊ばせる:日常の「もしも」から始める思考実験
忙しい日常に「もしも」の余白を作る
日々の仕事に追われていると、私たちの思考はどうしても効率や現実解を求める方向へと固定されがちです。限られた時間の中で成果を出すためには必要な集中力ですが、それが続くと、いつの間にか新しい発想が生まれにくくなったり、目の前のこと以外の可能性に気づきにくくなったりすることがあります。
「昔はもっと自由に発想できていたのに」「何か新しいことに挑戦したいけれど、どこから手をつければ良いか分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。まとまった時間を確保するのは難しい。でも、ほんの少しの時間でも、頭を柔らかくする「遊び」を取り入れることで、日常に新しい風を吹き込むことができます。
ここで提案したいのは、「もしも〜だったら?」と考える、簡単な思考実験です。特別な道具や場所は必要なく、頭の中で完結できるこの遊びは、忙しい大人がスキマ時間に取り組むのに最適です。
なぜ今、思考を「遊ばせる」必要があるのか
現実的な思考は確かに重要です。しかし、それだけでは見えない世界があります。「もしも」という問いは、日頃当たり前だと思っている前提を意図的に崩し、普段使わない脳の領域を刺激します。
この思考の「遊び」が私たちにもたらすメリットは多岐にわたります。
- 思考の柔軟性向上: 固定観念から解放され、様々な角度から物事を捉える練習になります。
- 創造性の刺激: 既存の枠を超えた発想が生まれやすくなります。これは仕事における問題解決や新しい企画立案にも間接的に繋がる可能性があります。
- リフレッシュ効果: 義務や責任から離れ、純粋に「考えること」そのものを楽しむ時間は、脳にとって良い息抜きとなります。
- 日常への新しい視点: 見慣れた風景や出来事も、「もしも」のフィルターを通すことで全く違って見え、日常が新鮮な発見に満ちたものに変わります。
短時間で始められる「もしも」思考実験の具体例
この遊びは、本当にいつでもどこでも、短時間で始めることができます。例えば、移動時間や休憩時間、あるいは入浴中など、ちょっとしたスキマ時間を見つけて試してみてください。
1. 身近なモノや状況に「もしも」を適用する
これが最も手軽で始めやすい方法です。
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例1:スマートフォン
- もしスマホのバッテリーが10年持ったら、世界はどう変わるだろう?
- もしスマホが触れるものの感情を読み取れたら、どんな面白いことが起きるだろう?
- もしスマホアプリが全て声で操作するタイプだけになったら?
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例2:通勤路
- もし通勤路の建物の壁の色が毎日ランダムに変わったら?
- もし道の端に毎日違う小さな宝物が落ちていたら?
- もし自分が地面から50cm浮いて移動できたら?
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例3:食料品
- もし全ての野菜や果物が甘いデザート味だったら?
- もし牛乳が炭酸だったら?
- もしパンが焼くと喋りだしたら?
2. ありえない設定を仮定する
もう少しスケールを広げて、物理法則や社会常識を一時的に無視してみる方法です。
- もし動物がみんな人間と同じ言葉を話せるようになったら、まず何を話すだろう?
- もし空を自由に飛べる能力を誰もが手に入れたら、都市の構造や交通システムはどう変化するだろう?
- もし時間を1日だけ止められたら、あなたは何をするだろう?
3. 簡単な「なぜ」を「もしも」に変換する
日常で当たり前と思っていることに対し、一度「なぜ?」と問いかけ、それを「もしも」に繋げることも有効です。
- なぜ信号機の色は赤、黄、青なのだろう? → もし信号機の色が紫、オレンジ、緑だったら、何が問題になるだろう?
- なぜ靴下は左右ペアなのだろう? → もし靴下が全て片方ずつで売られていたら?
遊び方の手順
- 問いを立てる: 上記のような「もしも〜だったら?」という問いを一つ、頭に思い浮かべます。
- 自由に発想する: その問いに対する答えや、そこから派生する状況、起こりうる面白いことなどを、一切制約なく自由に想像してみます。正しい答えや論理的な結論は求めません。
- 時間で区切る: 5分、10分、15分など、あらかじめ時間を決めて集中します。時間が来たら思考を中断し、また別の機会に再開しても構いません。
- 楽しむ: 生まれた発想そのものを純粋に楽しみます。誰かに話す必要も、記録する必要もありません。
「始める際のハードル」を下げるコツ
「何か新しいことを始めるのは億劫だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。この「もしも」遊びは、そのハードルが極めて低いのが特徴です。
- 完璧を目指さない: 深く考え込む必要はありません。頭に浮かんだことをそのまま受け止めれば十分です。
- 評価を気にしない: 誰かに見られるわけではないので、どんな突飛な発想でも問題ありません。
- 記録は任意: メモを取りたければノートに書き留めても良いですが、頭の中だけで完結させても全く支障ありません。
- 短い時間から: 最初はたった3分でも構いません。慣れてきたら少しずつ時間を延ばしてみましょう。
遊びを継続するためのヒント
せっかく始めた遊びも、忙しさに流されて続かなくなってしまうこともあります。
- 日常の「気づき」をストック: 通勤中に見かけたもの、ニュースで知った出来事など、「これって『もしも』を考えられそうだな」と思ったことを、スマホのメモ機能などに軽く記録しておくと、遊びのネタになります。
- 特定の時間・場所と紐づける: 「毎朝の通勤電車で5分」「お風呂に入っている間」など、既存の習慣と結びつけると続けやすくなります。
- 問いかけリストを作る: 事前にいくつか「もしも」の問いをリストアップしておくと、すぐに遊びに入れます。
まとめ
忙しい毎日の中で「遊びゴコロ」を忘れてしまうのは無理もありません。しかし、ご紹介した「もしも」思考実験のように、特別な準備なく、短時間で始められる遊びはたくさんあります。
この思考実験は、単なる気晴らしではなく、私たちの思考を柔軟にし、創造性を刺激する効果的な方法です。現実的な思考から一時的に離れ、自由な発想の世界に飛び込んでみることで、脳はリフレッシュされ、日常の見え方も変わってくるはずです。
まずは今日、たった一つの「もしも」から始めてみませんか。きっと、忘れていた好奇心や、新しい発見の喜びが、あなたの日常に静かに彩りを加えてくれることでしょう。